クロスビーとイグニスは同じスズキから発売されており、同じようなコンセプトを持った車です。
イグニスが発売された約2年後にクロスビーが誕生したのですが、2019年時点ではクロスビーとイグニスの販売台数には大きな開きが生じています。
なんと、イグニスの販売台数はクロスビーの約15%の売上と低迷しているのです。
この記事では、クロスビーがイグニスと比較してなぜ売れるのか、そしてイグニスがなぜ売れないのかを探ってみたいと思います。
目次
クロスビーとイグニスの売上状況
まず最初に、2019年度上半期(1~7月)のそれぞれの販売台数を確認してみます。
車種名 | 2019年度 1~7月販売台数 |
---|---|
クロスビー | 15,786台 |
イグニス | 2,364台 |
イグニスの販売台数は7ヶ月分の合計で2364台ですが、1ヶ月当たりの販売台数にすると約340台となりますので決して売れているとは言えません。
対するクロスビーの販売台数は7ヶ月分の合計で15786台であり、1ヶ月当たりの販売台数は約2255台とイグニスの約7倍の販売台数となっています。
これからクロスビーが売れる理由とイグニスが売れない理由を探っていきますが、両車の共通点から見ていきます。
クロスビーとイグニスは同じプラットフォーム
クロスビーとイグニスを比較していきますが、まず最初にクロスビーとイグニスには大きな共通点があることからお伝えします。
何かというと、クロスビーとイグニスのプラットフォームは同じだということです。
クロスビーのプラットフォームは同じスズキのイグニスやソリオと同じなのです。
プラットフォームの上に積まれるエンジンやボディーこそ異なりますが、車のベースは同じだということです。
両車のプラットホームつまり土台部分にあたる部分は同じものを使っての車づくりとなっており、兄弟車ともいえます。
クロスビーとイグニスを比較
そこでまず、2車のボディーサイズの比較から入ってみます。
ボディーサイズが違うと生活環境によっては購入の障壁になることもありますからね。
1.サイズ比較
クロスビー(A) | イグニス(B) | B-A | |
---|---|---|---|
全長 | 3760mm | 3700mm | -60mm |
全幅 | 1670mm | 1660mm | -10mm |
全高 | 1705mm | 1595mm | -110mm |
ホイールベース | 2435mm | 2435mm | 0mm |
車両重量 | 960~1000kg | 880~920kg | -80kg |
(1)全長
全長はクロスビーが60mm長いだけですのでバンパー部の張り出しがちょっと大きいのかなと言う程度で走行時には何ら気になる事は有りません。
イグニスも当然コンパクトカーのカテゴリーに入りますのでこれまたハンドルを握っての見切りや操作には何の支障もないでしょう。
よって、全長が販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
(2)全幅
全幅は両車の違いはたった10mmの差ですので、両車に大きな差は無いと考えてよいでしょう。
よって、全幅が販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
(3)全高
全高はイグニスに対してクロスビーの方が約11cm高いので、身長が大きい方の場合は選択時に大きな要因になることも考えられます。ただこの場合、車高よりも室内高の方が大きく影響すると思うので、このあと確認してみます。
(4)ホイールベース
ホイールベースが長くなると取り回しに影響が出ますが、両車のホイールベースは同じプラットホームを使用していますので同サイズで全く問題ありません。
よって、ホイールベースが販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
(5)車両重量
車両重量は、クロスビーが80Kg重くなっています。車両重量が重たくなると加速や燃費に影響することが考えられるので、この後の走行性能や燃費性能で影響を確認してみます。
(6)サイズ比較のまとめ
ボディーサイズは大きくなると狭い道や路地が多い地域に住まわれている方にとっては購入する際の大きな要因になってきます。
このサイズ比較の結果からは、すべての項目でクロスビーの方が大きく、思いことがわかりました。とはいっても、両車ともボディーサイズは大きい車ではないので、ボディーサイズが両者の販売に大きく影響があるとは考えられません。
2.室内空間比較
クロスビー
イグニス
室内スペースは購入に際して非常に大切な要素となります。
ここでは車室内の寸法的なものから検証していきます。
クロスビー(A) | イグニス(B) | B-A | |
---|---|---|---|
室内長 | 2175mm | 2020mm | -155mm |
室内幅 | 1355mm | 1365mm | 10mm |
室内高 | 1280mm | 1250mm | -30mm |
(1)室内長
室内長に関しては、クロスビーがイグニスに対して15.5cm長いことがわかりました。
この室内長の差は後部座席に大きな影響を与えると考えます。なぜなら、運転席がある1列目は後部座席と比較すると広く設計されているからです。
小柄な方であればイグニスでもクロスビーでも大きな差はないかもしれませんが、比較的大柄な方が乗られる場合は購入する際の大きな要因になると考えます。
(2)室内幅
室内幅はほぼ同じですので購入に際して大きな実質問題にはなりません。
(3)室内高
室内高に関しては、イグニスに対してクロスビーが3cm高いのですが、車高が11cm高かったことを考えると、車高ほど室内高は高くないことがわかります。
室内高はと言えば、主に頭上空間の差が問題となることでしょうが、これは前後席それぞれに座して見ないと30mmの差というものは感じられないでしょう。
ただし、イグニスの後席はデザイン上Cピラーが屋根に向かって狭くなっていますので高さはともかく圧迫感を感じられないか気になります。
よって、室内高が販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
(4)室内空間比較のまとめ
室内空間に関しては、イグニスに対してクロスビーが室内長で15cm長く、室内高で3cm高いことがわかりました。
コンパクトサイズの両車にあってこの差は購入に際して大きな影響を及ぼすと考えられます。
既にお伝えしましたが、室内長が15cm長ければ運転席や助手席と後部座席との空間が広くなるため膝が当たるなどを避けることができます。
3.エクステリア比較
車のエクステリアは見た目に大きく影響しますので、好き嫌いが分かれるとともに販売台数にも大きな影響を与えます。
ここでは、筆者の個人の見解となりますがエクステリアの比較を行ってみます。
クロスビー | イグニス |
---|---|
(1)フロントデザイン
クロスビーの面構えはハスラーの兄貴分として堂々としたデザインで、いかにもSUVといった好ましいデザインになっています。
ヘッドランプとクリアランスランプの一体化した斬新なデザインで少しでも車幅を広く見せる効果を狙ったのか、この辺が好感を持って見られているのではと考えます。
一方、イグニスの方はと言えば、これまた押し出しの強い印象を受け、意外に良しと思われた方も多かったと思われます。
前方から走ってきたこの車を見れば一目でイグニスと分かるデザインなのです。
しかし、クロスビーのフロントデザインはハスラーと瓜二つと言ってよいほど似ています。そして、改めて説明するほどでもなく、ハスラーは軽自動車に新たなカテゴリーを打ち立てたと言えるほどの人気を誇っています。
「ハスラーの見た目は好きだけど軽自動車はちょっと・・・」と感じていた方の多くがイグニスではなくクロスビーを購入しているとも考えられるでしょうし、クロスビーのフロントデザインが受けているとも言えるでしょう。
そう考えると、クロスビーがイグニスよりも売れている要因としても大きいと感じます。
(2)バックデザイン
クロスビーのバックデザインはと言えば、これまたBMWミニを彷彿とさせるようなボリューム感のあるバックドアを配し、颯爽と走り去る光景を思い浮かべます。
個人的にイグニスの唯一のハンデとなってしまったと思われる所が、バックデザインなのです。フロントのあの押し出しの強さから一転して、バックデザインの上半分が台形状に絞り込まれている所がとても貧相に感じられてしまうことが大変残念に思っているところです。
このあたりがイグニスの販売面でマイナス要因となっているのではないかと考えます。
(3)サイドデザイン
クロスビーとイグニスのサイドデザインですが、あまり大きな違いはないので売れ行きに影響する事はないと考えます。
(4)エクステリア比較のまとめ
エクステリアに関しては、もともと売上に大きく起因する要素です。
クロスビーはもともと人気の高いハスラーを大きくしたようなデザインであるためデザイン的にも多くの方に受け入れられています。しかし、イグニスに関しては個性的なデザインであるもののクロスビーほどのインパクトはどうしても感じられません。
そう考えると、同じようなコンセプトで同じような大きさなのであれば、デザイン的にもクロスビーを選ぶ方が多いのも納得感があります。
3.インテリア比較
個人的な好みになりますが、車の内装であるインテリアのデザインや使い勝手で販売に影響を与えると考えます。
例えば、筆者はトヨタが採用していた中央にメーターを配置さいたインパネは好みではありませんので、購入対象にならないからです。
ここでは、クロスビーとイグニスのインテリアを比較して販売にどのような影響があるのかを考えてみます。
「クロスビー」と「イグニス」の内装画像をまとめたのは下記の表になります。
クロスビー | イグニス |
---|---|
インテリアの比較を行うにあたって、インパネ、シート、素材の三つの項目で比較を行ってみます。
(1)インパネ
インパネですが、クロスビーはSUVを全面に押し出したデザインが採用されています。カラーも黒と白のツートンカラーであることから華やかさ・ワクワク感を演出しています。またスイッチ類も割と大ぶりで操作性が良いと考えます。
一方イグニスは全面黒基調(ブラックインテリア)で一見地味な印象を受けますが、グレードにより、オレンジインテリアとチタンインテリアも選択可能です。
こちらもSUVを標榜しているのでユーザーの要望にはしっかりと応えています。
総じて、インパネが販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
(2)シート
両車とも撥水性をもたせたファブリック生地を使用していますのでこれによる違いはほぼありませんが、シートアレンジなどでは差が出ている部分がありますので述べていきます。
クロスビーですが、全車運転席にはシートヒーターが付き、後席は左右独立しておりそれぞれが前後にスライドでき、後ろにフルスライドすると後席足元には余裕のあるスペースが生じます。
さらに前席シートバックには可倒式のテーブルがついていますので、特にファミリー層には有難い装備となっています。
一方イグニスでも、4WDとなると前席左右ともシートヒーターがつきますが、座面と背もたれまで暖めてくれ、特に女性にはやさしい装備となり評価は高いです。
また、イグニスの後席も左右分割シートとなっており、前後スライド量がなんと165mmもありフルスライドすれば後席足元には余裕のスペースが確保されます。
しかし、イグニスのちょっと残念な点がリアシートバックが5:5の分割可倒となっていて、仮に4人乗車で荷物が多い場合に後席シートバックを半分倒すと後席の2人がかなり窮屈な事になってしまいます。
なぜ5人乗りで可倒式のリアシートを持ちながら一般的な6:4としなかったのか疑問が残ります。
室内空間比較でもお伝えした通り、室内長がイグニスはクロスビーよりも15cm短いことから、販売への影響はシートの機能性というより室内長なのかもしれませんね。
(3)素材のまとめ
シート素材に関しては、両車ともファブリックが採用されていますので大きな違いはありません。
(4)インテリアのまとめ
インテリアに関して、両車の販売に大きな影響を与える要因はありません。
4.動力性能比較
動力性能は車のパワーに直結する部分ですので、販売に大きな影響を与えると考えます。
必ずしも大きなパワーが必要なわけではありませんが、ストレスを感じないパワーは必要でしょう。
ここでは、両車の動力性能を比較してみます。
クロスビー(ハイブリッド) | イグニス(ハイブリッド) | |
---|---|---|
エンジン(種類) | K10Cターボ&モーター | K12C+モーター |
エンジン(排気量) | 996cc | 1272cc |
エンジン(最高出力) | 99ps/5500rpm | 91ps/6000rpm |
エンジン(最大トルク) | 15.3kg-m/1700-4000rpm | 12.0kg-m/4400rpm |
モーター(最高出力) | 3.1ps/1000rpm | 3.1ps/1000rpm |
モーター(最大トルク) | 5.1kg-m/100 | 5.1kg-m/100 |
エンジンに関しては、クロスビーの排気量がイグニスよりも200cc小さくなっていますがターボを搭載しており、数位置的にはイグニスと大きな差はありません。
よって、動力性能が両車の販売に大きな影響を与えることはないと考えます。
5.走行性能比較
ここでは、クロスビーとイグニスの走行性能を比較したいと思いますが、両車ともアウトドアをイメージしていることもありますので、両車の4WDシステムを比較してみます。
(1)クロスビーの4WDシステム
このクラスでは一般的なビスカスカップリングを用いた4WDシステムとなっており通常の、特に冬期間の積雪時や凍結路面での走破性能は問題はありません。
特にクロスビーには凍結路の発進などでは「スノーモードスイッチ」が有り発進時の過度なトルクの発生を防いでくれます。
具体的には、前輪のスリップを感知するとビスカスカップリングが働き即座に4WDモードとなります。更に装備されているのは「グリップコントロールスイッチ」と言い空転している車輪にブレーキをかけ残りのタイヤを駆動状態にして脱出可能とします。
(2)イグニスの4WDシステム
イグニスの4WDシステムですが、クロスビーと同様に、ビスカスカップリングを用いた4WDシステムとなっています。いわゆる生活4駆といわれる現在国内メーカーの4WD車で大きなウエイトを占めている機構です。
クロスビー同様グリップコントロールスイッチをオンにしておけば、雪道での不安はかなり払拭されるでしょう。
(3)走行性能のまとめ
ご覧いただいたとおり、4WDシステムに関しては両車で大きな違いはありませんので販売にも大きな影響はないでしょう。
6.燃費比較
燃費性能は販売に大きく影響すると考えます。なぜなら、燃費の良し悪しでガソリン代というコストに直結するからです。
走行距離の多い方にとっては、燃費性能は購入時の大きな要因だと考えます。
クロスビーとイグニスのカタログ燃費と実燃費をまとめたのが下記の表となります。
【クロスビー】
(JC08燃費) | カタログ燃費 | 実燃費 |
---|---|---|
FF | 22.0km/L | 約16km/L |
4WD | 20.6km/L | 約15km/L |
【イグニス】
(JC08燃費) | カタログ燃費 | 実燃費 |
---|---|---|
FF | 28.8km/L | 約17.0km/L |
4WD | 25.4km/L | 約18.0km/L |
(1)カタログ燃費比較
カタログデータ上からいえば、イグニスのFF車がかなりの期待を抱かせてくれます。
(2)実燃費比較
JC08モードに対しての実燃費は一般的には、大体カタログ燃費の70~78%位なのですが、イグニスFFのカタログ燃費と実燃費のギャップが大きいのが気になります。
カタログ燃費ではイグニスはクロスビーよりも約6km/L程度良い燃費だったのが、実燃費では両車の差は約1km/Lと縮まり、ほぼ同じ水準となっています。
(3)燃費性能のまとめ
実燃費で言うと、重量差で両車多少の差は出ましたが、このクラスでの平均的な燃費ですし、燃費での販売に量の差は生じないと考えます。
よって、燃費性能が両車の販売に大きな影響を与えているとは考えられません。
7.安全性能比較
いまや安全性能ではメーカー関係無く開発競争が激しいのですが、スズキのこの2車はどうでしょうか。
(1)クロスビーの場合
安全運転支援システムとして、単眼カメラとレーダーの組み合わせの「デュアルセンサーブレーキサポート」を装備して、歩行者保護も万全としています。
(2)イグニスの場合
一方イグニスもステレオカメラで、「デュアルカメラブレーキサポート」の装備でクロスビーより一歩先を行っています。
(3)安全性能比較のまとめ
安全性能は甲乙つけがたいですが、共に最新のメカを装備しています。
よって、安全性能が両車の販売に大きな影響を与えるとは考えられません。
8.価格比較
次は、「クロスビー」と「イグニス」の車両本体価格の比較を行ってみます。
車の価格は販売に大きな影響を与える要因と考えられますが、クロスビーとイグニスはどのような価格帯となっているのでしょうか。
両車の価格帯とまとめたのが下記の表となります。
クロスビー | イグニス | |
---|---|---|
価格 | 1,765,800~2,189,160円 | 1,382,400~1,942,920円 |
車両価格が購入の大きなファクターとなりますが、価格差はグレードによる選択で解決出来る問題なのでここでは販売量の差の原因とはなり得ないでしょう。
クロスビーが売れて、イグニスが売れない理由
ここまで様々な視点でクロスビーとイグニスを比較してきました。
その結果、クロスビーが売れて、イグニスが売れない、言い方を変えればクロスビーがイグニスより売れる理由が見えててきました。
大きくは次の2点と考えます。
-
- デザイン(フロント及びバック)
- 室内長
クロスビーのフロントデザインはハスラーのデザインを踏襲しています。
そして、クロスビーはハスラーのワイドサイズ版の要望に応える形で誕生している背景もあり、クロスビーのフロントデザインが多くの方に受け入れられていると考えられます。
イグニスについては、フロントとバックのバランスは取れているとは感じるものの、全体的な印象はちょっと微妙な印象です。特に女性ウケするデザインでは無いようにに感じます。
また、クロスビーとイグニスは同じコンパクトカーでありながら、クロスビーの方が室内長が15cm長いこととパッケージングの工夫で見た目以上に広いと評判です。
大人4人が乗車しても後部座席の人の膝が前部座席の背もたれに当たらないとのこと。
それでいて、価格や燃費も両車に大きな違いが無いとあれば、イグニスではなく、クロスビーが売れるのも納得いただけるのではないでしょうか。
まとめ
同じようなコンセプトで同じような大きさの車でありながら、クロスビーは売れて、イグニスが売れない原因を探ってきました。
両車で大きく違っている部分は少なく、結論としては「フロントデザイン」と「室内長」という結果に落ち着きました。
購入時の参考になれば幸いです。
クロスビー 値引き最大化の秘策
クロスビーを新車で購入する時、「出来るだけ安く購入したい!」と思いませんか?
クロスビーも安全装備の充実等により車両本体価格が約200万円と高額になっています。
だからこそ、出金を減らしたいと思うのも無理はありません。
例えば、出金を減らす手段として思い浮かべるものは「値引き」ではないでしょうか?
確かに値引き額が大きくなればなるほど出金を減らすことは出来ます。
しかし、現実は排気量の小さな小型車の値引きはクロスビーを販売するスズキ社だけでなく各メーカーともに大きくありません。薄利多売で利益を出す戦略です。
だからといって、諦める必要はりません。
方法はあるのです。
知っている人は「なんだあの方法か!」と思うかもしれませんが、知らない人にとっては「そんなに違うの?」というものです。
詳細を下記の記事で説明していますので確認してみて下さい。
一度、知っている方法か確認してみても損することはありませんよ!
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